ヒキガエル本15―にっこりいけのヒキガエル

にっこりいけのヒキガエル
ソーントン・バージェス/作
田谷多枝子/訳 赤星亮衛/絵
金の星社 1972年 174P B5変型
小学初〜中級向
世界中で出版され、アニメ化までされたこのシリーズ、日本では残念ながら長らく絶版。古くからある図書館などでは置いてあるところも多いと思います。ほとんどが仮名で大きな文字、低学年でも充分読める本です。
アメリカの作家、バージェスによる動物童話の連作シリーズ。日本では全20巻で刊行され、アニメ『山ねずみロッキーチャック』の原作として有名です。アニメでは山ねずみのロッキー(原作ではジョニー)が主人公ですが、原作は巻ごとに様々な動物たちにスポットを当てています。
このシリーズを読んだのは今回が初めてですがアニメは見てました(年齢がわかる……)。詳しい話は覚えていませんが、山ねずみがクローバーを囓ったり、キツネが忍び足で歩いたり、森の動物たちの動きがとてもリアルで印象的でした。
この本の主役はヒキガエルのじいさま。よく童話では醜く不格好なだけの生き物として描かれるヒキガエルですが、作者は科学者でもあったそうで、単なる擬人化ものではありません。物語前半では、ピーターうさぎが友人の知られざる面を発見するという形で、美しい声、宝石のような眼、素晴らしい舌、不思議な脱皮の習性など、小さな読者にもわかるように見事に表現しています。
例えば、舌の描写。私も以前紹介した『いのちのかんさつ2 カエル』を読むまではどういう仕組みになっているか知らなかったのですが、舌が口の先の方に付いていて、裏返しに獲物をくっつけて飲み込むことがきちんと書いてあるのです。
他に従兄弟のじいさんがえるもいて、こちらは普通のカエル(ウシガエル?)です。歩き方、オタマジャクシの期間、冬眠する場所など、ヒキガエルとの違いがさりげなく示されています。
ちょっと残念だったのは挿絵。素敵な絵なのですが、春のコーラスを歌うカエルたちが全てトノサマガエルのように頬の鳴き袋を膨らませています。文章ではちゃんとじいさまは喉を膨らませているんですけどね……。
巻末には、訳者のあとがきとバージェスの生涯の他に、アニメの監修を行った上野動物園の初代園長、古賀忠道氏によるヒキガエルの解説が載っています。
※金の星社の許可を受けて画像を掲載しています。
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